黄昏色の列車に乗って。

ー僕が旅を続ける理由ー

星空と海原と―海辺の田舎町にて―

2015 Early Autumn

テレビのニュースでは行楽地へ向かう車の渋滞が報じられていた。
僕は満席の特急列車を降り、駅前で拾ったタクシーに乗り海岸線を走っていた。

快晴の空と青い海の彼方に水平線を眺めながら、海辺の田舎町を訪ねた。


退屈な日常、沢山考えすぎて
孤独や不安と野心がつづれおりになり
自分を見失いそうになった時、見知らぬ街を訪ねたくなる

単なるヴァケーションではなくて、何かに縛られているくらいがいい。

道に迷った時、悩んでも解決なんかしない

前を向いて歩くんだ。それしかないんだ

そして何も考えず、歩けなくなるまで必死で働くんだ

そうしたら、何故自分がこの道を選んだのか、自分がどう生きていきたいのか
答えが見つかる気がする


仕事を終え、澄んだ夜空に満天の星が広がる露天風呂に浸かり
彼方に見える漁火を眺めながら缶ビールを空けたころにはもう心地よい眠りにつき

朝焼けの眩しさ、さわやかな潮風で目が覚め
また新しい一日が始まる。

時は無常であり、沢山の記憶が波打ち際に押し寄せる潮の如く

押し寄せまた引いてゆき

そして今日もまたヘトヘトになるまで働くんだ。


未来に希望なんかないと思っていた。

でも、都会の喧騒や過去の傷ににかき消されていただけかもしれない。

自分が好きなもの、自分がやりたいこと、自分の生き様とは何なのか―


大海原や満天の星空を見ながら好きな仕事をしていると
自分の悩みなど取るに足らない事なのではないのかと思えるようなってきた


何もない田舎町の夕暮れ時、茜色に染まった空を見上げると
家路を急ぐ鳥達の姿、裏山からは鈴虫の鳴き声がした

 

ありのままに流れる時を感じ、受け容れ、自分の生き方を考える

 

かくあるべき生き方とはなんだろう

 

自分の中で普遍的なものとはなんだろうー

 

 

迷ったら旅に出ろ。前を向いて歩むんだ。そして汗をかいて働くんだ。

 

働いて、働いて、働いてー

疲れ果てて眠る頃、不安や心の迷いは

夜の風にさらわれて、一つの星のように小さな存在になっている気がした

 

 

 

ボンボヤージュ。

 

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Journey of a office worker

「君はいち社員だろう?
うちの取引先と一線を越えるようなことをしてはいかん事を分からんのかね?」
 
対等だからと強気の姿勢を崩さなかった。
 
プロジェクトを成功させるために必死だった
 
しかし、そんな思いは社会のヒエラルキーやら大人の事情やら、汚い連中に吹き飛ばされた。
 
喉元まで出かかった
 
「思いっきりやれと言ったのは貴方じゃないですか?」
 
なんて若い頃の口答えはしなかった。
 
 
 
 
オフィスを去る日ー
 
新宿・都庁近くの高層ビル街で炎天下の中僕はチューハイを飲んでいた。
入道雲と突き刺すような日差し、陽炎。
スーツの中は汗が滝のように流れていたが暑いという感覚すらなかった。
 
悔しさとやるせなさ、そして短い期間に築いてきた
ビジネスパーソンとの引き裂かれるような別れが受け容れられなかった。
 
 
貴方が居てくれたから楽しく、そして素晴らしいプロジェクトが成功させられた
本当に酷い人たちね。私たち絶対抗議するけど、でもそんな酷いオフィスに居る人ではないわ、ジョージ。
 
そう惜しんでくださった方
 
ジョージ、馬鹿になるんだ、ちっちゃい男で終わるんじゃないぞ、強い相手は大体つまらない奴らだ、そんな奴らに握りつぶされるより利用してやれ!
 
缶チューハイの缶を握りつぶすほどのやるせない想いをぐっと胸に秘め
 
温かい言葉と委託先から取り上げた数ヶ月分の生活費を持ってオフィスを去った。
 
sat Aug 8
僕は自宅のベットで寝転んで静かに天井を見上げていた。
 
さぁ、何やるかなぁ、、、
 
持て余した時間とささくれた心
もうお盆の帰省なんか飛行機もバスもいっぱいで今更席なんか取れないー
 
 
 
 
夕刻、テラスに実った獅子唐を収穫し、ストレートのウイスキーを火照る手で温めながら呑んでいると一枚のチケットが届いた。
 
そこには「瀬戸」という文字が書いてあった。
 
僕のふるさとを連想させる海の名前、播磨灘、太平洋、そして瀬戸内海
 
新幹線の延伸や車輌の老朽化で余命幾ばくもない日本の寝台列車の中で最後まで定期列車として生き残っている「サンライズ瀬戸号」
 
その寝台券だった。
 
個室だから飛行機と然程値段は変わらない。
しかし移動時間は10倍
 
だけど、こうして旅やblogを再開した時思った事
 
「どうせ死ぬんだったら好きな場所に行って好きな事をやって死ねばいい」
 
未だ見ぬ景色を見て、触れたことのないものに触れて、やりたかったことをやる
 
そうだ、故郷へ旅に出ようー
 
8月12日、サンライズ瀬戸号に乗って故郷へ旅をすることを決めた。
 
wed aug 12,10:00pm
東京駅
高松行の寝台特急サンライズ瀬戸は定刻で静かにホームを離れた
 
瀬戸は寝台特急の中でも車齢が若く、車内はビジネスホテルのような整然として落ち着いた雰囲気だった。
品川、横浜と都会の喧騒を足早に駆け抜け、熱海を出発した頃には何も見えず
浴衣を着た自分の姿が室内灯で窓ガラスに反射していた
 
漆黒の車窓にカーテンをかけ、駅弁を広げた。
 
今まで寝台特急に乗った時の目的地は札幌など、観光地が多かった。
 
でも、今夜は違う。
サンライズ瀬戸は故郷へと向かう列車だ。
 
いつも線路や空を飛ぶ飛行機を眺め、これに乗れば故郷に帰れるんだ
でも、もう少しだけ頑張ろうと自分を鼓舞してきた。
 
故郷行きのカタカタと揺れる車内で飲む日本酒の味はなんとも言えない切ない味がした。
 
東京を出る時の電話では、母も父もとても元気だった。
 
でも、人は少しづつ老いていく
不慮の事故だってある
 
この旅の旅費を貯金しておけば母の誕生日に少し気の利いたプレゼントでも贈れるかもしれない。
 
でも近年自分の失敗から学んだこと
 
この酒が苦い日が来るかもしれない。
病気・事故…無事を祈り手を合わせながらこの列車や飛行機に乗る日が来るかもしれない
 
その日がいつ来てもいいように、時間と出逢い、触れ合いを大切にしようと心に決めていた。
 
東海道本線の堅牢な路盤と心地良い揺れは眠りを誘い、目が覚めた時列車は早朝の岡山駅の近くを走行していた。
 
シャワーを浴びて、カーテンを開けて暫くすると列車は太陽が昇った瀬戸大橋にさしかかった。
 
ーSunrise of The Great Seto Bridgeー
 
瀬戸内海
 
穏やかな海ー小さな島々の間を行き交う貨物船ー
 
 
 
幼き頃から愛したこの風景、この風の薫り、そしてThe Great Seto Bridgeーその全てが響き合って故郷へと誘うーこの旅路が大好きだ。
 
 
坂出駅を経てサンライズ瀬戸号は定刻で高松駅に到着し、寝台列車の旅は終焉を迎えた。
沢山の帰省客を吐き出した後サンライズ瀬戸号は車庫へと帰って行った。
 
thu aug 13,7:30am
高松駅、静かな瀬戸の海がすぐ近くにあり、広い駅前広場からは灯台まで歩いて行ける。
 
ターミナルらしくない喧騒感のないとても素敵な駅。
 
ここで僕はいつも頂くものがある。
「連絡船うどん」という讃岐うどん
 
まだ瀬戸大橋がなかった、僕が生まれた頃までは本州と四国は船でしか結ばれておらず
高松から宇野(岡山県の港町)までは国鉄が宇高連絡線という航路を持っていた。
 
汽車で高松にたどり着くと人々はホームから桟橋を渡り宇高連絡船に乗り本州と行き来した、その船の中で食べるうどんがとても美味かったそうだ。
 
今はその名残を少しだけ残し高松駅の構内でひっそりと営業している。
 
巷では肉ぶっかけだの、釜玉だの讃岐うどんブームで色々流行っているが、ここの「かけうどん」を頂くと、心がゼロに戻る気がする。
 
関東の真っ黒の出汁に慣れていた舌は一瞬「白湯(さゆ)?」と思うほど味が薄く感じるが、食べ進めるごとにいりこ出汁の風味とほんの少し整えた正油と塩の味が舌と心に染みてくる
 
僕にとっての故郷の味ー
 
9:20am
「連絡船うどん」を頂き、故郷へ接続している特急うずしお号に乗り込み
終着の徳島駅を目指した。
 
実家に荷物を置き、友人と連絡を取り、両親は仕事に出かけていた。
束の間の一人の時間。
 
散歩を兼ねてスニーカーを履いてかつての通学路を走った
さつまいも畑の彼方に沈む夕映えがとても美しくて、思わず足を止めて何度もシャッターを切った
 
6:30pm
ランニングから戻り、シャワーを浴びた頃中学校の時からの親友、ダイスケから連絡が入る
「あと一時間位で着けるから、阿波踊り行こう!!」
 
一言で言うと人格者、とってもハートのあたたかいダイスケは僕が阿波踊りに行きたいと言っていたのを覚えてくれていた。
 
家庭も設けていて、仕事を忙しく終えたあと車を運転しての帰省
疲れている癖に楽しもうぜ!って童心に帰って共に踊った。
 
黄昏時のバーベキューパーティ
いつもの顔ぶれが集まっていた。
子供を連れている奴や奥さんと共に集まった奴、農家の社長になってる奴ー
 
スイカを割って、花火をして、また会おうな!ってね。
 
幸せな時間は瞬く間に過ぎ、東京へと帰る日、姉の車で駅まで送ってもらうことにした。
 
少し前まではね、見送ることがとても寂しかった。
でも今は見送られることがとても寂しい。
大切な人をその地へ残していくことがとても寂しいのだ。
 
mon aug 17,9:18am
特急列車「うずしお10号」は定刻で入線してきた。
姉と母は改札をくぐりホームまで見送りに来てくれた。
 
「何にもないけど、また帰っておいで。東京でダメになったら何時でも帰ってくるんよ」
 
発車ベルが鳴り、車掌さんの笛の音と共に列車のドアが閉まった
 
ゆっくりと走り出す列車
 
母は手を振り列車を追いかけてきた。
 
僕は窓の外を見ることが出来なかったー
 
男たるもの大切な日が来るまで泪を見せないと決めたから。
だから母の顔は見ず、心の中で精一杯ありがとうと叫んだ
 
列車は瀬戸大橋を渡り岡山駅に着いた
 
ここから先は長い長い旅路となる
新幹線でも、飛行機でも特急でもない鈍行列車の旅だ
 
名物を食べながら、なかなかやってこない列車を待ちながら
久しく会わない友人や先輩を訪ねながら
 
土砂降りの雨も束の間の夕映えも、窮屈な座席もー
全てが素敵な思い出になるんだ

 

 
悔いのない生き樣で
胸いっぱいの幸せを携えて
 
 
いつまで経ってもドリームジャーニーで。
 
 
ボンボヤージュ。
 
 
 

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Places visited : Tokyo-Takamatsu-Station;Tokushima-Station

Takamatsu City,Tokushima City,Okayama City,Kyoto City、Ogaki city

and more...

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Sleeper Limited EXP "SUNRISE SETO" room:private cabin(B Sleeper) "サンライズシングル"

Tokyo STN -Takamatsu STN Passenger Ticket 11,600 JPN
 berth charge 7,560 JPNexpress fare 3,240JPN

 

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Ogaki-STN-TokyoSTN
"快速ムーンライトながら"rapid "Moon Light NAGARA”

 

****************************************Buon Viaggio!*****

 
 
 

June in the rain

One day...
 
過去に帰らず、過去に感謝し、前を向いて歩くんだー
 
1年前は何してたかなぁ、なんて振り返る事はしない。
 
でもね、この梅雨空の下、不意のスコール
 
傘もささずに家路を急ぐ途上
 
通りのがかりのレストランのテラスからこぼれてきた
君が好きだった想い出のメロディ
 
 
 
ー想い出のとなりには想い出の場所があり、想い出の曲があるー
 
 
 
引き止めれば良かったのかな、それともこれで良かったのかな。
 
 

誰かのぬくもり探したけれど見つからない。

 

君は今どこで何をしているのかな

 

素敵な道を歩んでいることを祈りつつ、空虚な心をおさえるー

 

寂しさ隠すために

 

"just walking in the rain"口笛吹きながら

 

 今日は好きなワインでも開けるとするか。

 

そんないつもの帰り道

 

 

ボンボヤージュ。

 
 

The ”Special Seat" that I love -特等席からの景色が見たくて-

sat,Jun27,7:30am

浜松町World Trade Center
 
眠れなかった昨晩は13年前の少年のココロと同じだった。
 
スーツに添乗旗、手配簿や名簿を挟んでいるのは、10年前に山梨のひなびたドライブインで貰った時代遅れのバインダー
 
バスがゲートに入り、受付が始まった
 
旅が始まるー
 
命を授かったことに始まり、就学、卒業、恋愛、失恋、転勤や新しい何かが始まるとき
 
不安と期待が入り混じり、なんとも言えない想いのなか一歩を踏み出す事への希望を感じる瞬間、それが旅の始まりだと思う。
 
"Life is Travel&Music"
 
ふとしたご縁で今日また夢のバスが走り出した。
 
もちろんずっとここにいる事はできない。
 
何故なら、僕の人生は旅をする事であるからー
 
8:30am
バスが走り始めたとき、憧れていたtrackの一小節を借りて挨拶を始めた。
 
おはようございます。皆様の夢を乗せまして、ABC Sight seeingは浜松町バスターミナルを出発しました。
 
ー夢を乗せてー
 
クルーしか座ることのできない特等席からの視界は13年前と変わらず、今日も格別だったー
 
 
ここでいう特等席とはいわゆる”ビジネスクラス”のような豪華という意味ではなく
自分の中で一番好きなシートという意味だ
 
 
ボンボヤージュ。
 
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Places visited :Iwaki City,Fukushima JAPAN

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HOTEL :Secret(worked)
 
****************************************Buon Viaggio!***

想い出のとなり

mon June 8,10:02pm

新宿駅西口

 

「クソッタレ!!」

 

息を切らした僕は急いで流れているタクシーを拾った。

格安バスのチケットをインターネットでたまたま見つけ、突然ではあったが帰省する事にしたのだが

 
肝心のバス乗り場を間違え、指定の場所に着いた2分前にバスは出発してしまっていた。
乗り遅れたバスを追いかけるために、東名高速をドライバー抱えてトバす羽目になってしまい
格安だった筈が結局JALのBusinessを使った方が安い程金を使ってしまった。
 
Tue,June 9,6:30am
どうにか辿り着いた田舎は、小雨が降る静かな朝だった。
嬉しそうな母
食卓にはダイエットをしていると何十回も伝えているにもかかわらず
僕の好きな干物や地魚の刺身、明太子が並んでいた。
 
実家の修繕は昔から僕の役目
ドアの建て付けやウッドデッキの張り替えなどノコギリとドリル片手に東京のマンションでは出来ない腕を振るった。
 
そして、この旅の大きな目的のひとつ
大切な先輩が命を授かった、その安産祈願だ。
先輩と出会ったのは僕が20歳の頃大学を中退し、家を飛び出して修行していた飲食店
 
いつも素敵な笑顔を絶やさない人だったが、その瞳がとても深く
後になって話してくれたのだが幼少期から今迄苦労ばかりの人生だったそうだ
 
そんな彼女とは、修行をした職場を離れて以来、大学に復学してからも、東京で会社を興してからも、連絡を頻繁に取る事はなかったが、いつも近くにいて心が繋がってる気がしていた。
 
10,6:30pm
小さなお守りを手渡し、またね!と見送ってくれた。
その顔はいつも以上に満面の笑みだった。
 
いつもだったら面倒だからとタクシーを拾うが、今日は少し懐かしい気分に浸りたく通学に使っていたバスに乗り徳島駅を目指した
 
四国三郎と呼ばれる徳島の大河に対面通行の小さなトラス橋がかかり、道路は夕暮れ時のにわかな渋滞が始まっていた。
 
もう一つ上流にかかるトラス橋には2両編成の列車がカタカタと走り、雨上がりの茜色の空に映えるその姿がとても綺麗だった
 
徳島駅の一つ前、昔の繁華街に近いバス停でバスを降り、今回の旅のもう一つの目的地へと向かった。
 
1980年代は栄えていただろうか、お遍路さんが止まっていただろう民宿や居酒屋の空き地が目立つその一画にある
創作料理と陶芸ギャラリー「八寸」
僕の15歳の頃からの行きつけのお店だ。
 
入り口には骨董品や僕の部屋にも飾ってあるお揃いのビリージョエルのレコード
 
7:30pm
ドアを開けると15年前と変わらない
「おぉ、ジョージ、えっとぶり」
白髪でスラッとした出で立ちの粋なマスターといつも気さくなママさんが迎えてくれた。
 
「えっとぶり」とは徳島の方言、”阿波弁”で「久しぶり!」の意だ。
この言葉を聞くと、なんとなく癒されるのが徳島人である。
 
エビスの瓶ビールを頂き、カウンターの前に整然と陳列されたレコード盤を
今日は何をリクエストしようかと眺めつつ
壁面に広がるマスターの陶芸作品を物色する。
 
ギャラリーでもあるので作品は販売してもらえるが、僕がいつも目をつけるのは値札のない作品、マスターお気に入りの非売品である。
心優しいマスターは結局いつも作品を分けてくださるのだが、、
 
ジョージ、これ欲しいん。。。」
 
時に、マスターには警戒されてしまうのである。
 
後で触れるが、この日もドラマがあった。
 
最初はカウンターに僕一人だけだったが、浴衣を着た紳士、外国人の女性、やたらと松田聖子のレコードをリクエストする酔っ払いのサラリーマングループ
レコードのボリュームも上がり、店内はにわかに活気づいた。
 
僕は浴衣を着た紳士に話しかけた。
 
「どちらからですか?」
 
「東京ですよ」
 
「奇遇ですね〜僕も東京でして」
 
「何を使って帰省されたんですか?」
 
「海部観光バスです。」
 
「えっ、僕も海部ですよ!いつお乗りになりました??」
 
「一昨日です」
 
「えっ、!私も一昨日です!でも乗り遅れちゃって・・」
 
「え!ドライバーが探し回ってたあの人もしかして!!」
 
「そうです!!それ僕だったんです」
 
「こんな奇遇あるんだね!ちなみに住んでるのは何処?」
 
「赤羽橋です。」
 
「え!バスに乗る前あそこの駅の近くの梅寿司で飲んでたよ!!」
 
普段はとなりに座った方と連絡先を交換しないのが僕の流儀だが、この紳士とは連絡先を交換した。
 
次の日紳士から入ったLINEの中に
「縁ーえにしーとは不思議なものですね」
とあった。
 
それだけではなかった。
カウンターの左隣に座っていた陽気な外国人の男性、僕が通っていた中学校のALTの先生だった。
 
東京に出て、腐る程物件を見て、目が回るほどの飲食店を視察して歩いた。
確かに行きつけはあるが、八寸のような”ーえにしー”を感じる店には未だに出逢えない。
 
姉がそそろ迎えに来ると車を出してくれていたのだが、僕にはマスターにどうしても言い出せないことがあった。
そう、また値札のない作品を見つけてしまったのだー
 
その作品は徳島では有名な¨ちくわトンネル¨と呼ばれる場所をマスターが何十年も前にモノクロで撮影し、中央付近をセピア加工しパネルにした作品だった。
¨ちくわトンネル¨とは、煉瓦造りの短いトンネルに
短い汽車が通過した時、食品の¨ちくわ¨に見えることから地元の人々がそう呼び出し、徳島県民なら誰もが知っているトンネルだ。
 
盛り上がるカウンター、もうすぐ車が到着してしまう。
 
僕は意を決してマスターを作品の前まで連れ出した
 
「マスター、これはマスターが大切にされているものですよね。。。」
 
「どしたん?欲しいんで?」
 
「はい!どうしても好きになってしまいました!!!」
 
マスターは一呼吸してパネルを壁から取り外し
 
「ええよ、これ、持って行き。」
 
僕は驚いた。まさか学生時代から大切にされているものを譲っていただけるなんて・・・
改めて意を決した僕は切り出した
 
「値段がつけられないのは承知ですがお幾ら、、」
 
マスターは何時ものおおらかな笑顔で
 
「これはええけん持って行き。東京で仕事頑張るんじょ。その時の出世払いでええけんな」
 
涙が溢れたー
 
1年前、仕事で騙され、病で倒れた時もこの場所で静かに時を過ごした。
 
帰省したら一番に
「先生(マスター)陶芸やらせてください!」
と寄ったのもこの場所ー
 
学生の頃好きな女の子を口説いたのも
 
一緒に商売をやろう!と握手をした仲間と乾杯をしたのもこの場所だった
 
僕はいつもワガママで生意気な客だったと思う。
 
でも僕の帰ってくる場所のひとつがマスターのお店だ。
 
 
今年還暦のマスター、僕が出世払い出来る日まで、いつまでも元気でいて欲しいと願いながらー
thu June 11,9:35pm
 
ドアマンに 
「高級な絵画なので丁重に扱ってください」
 
と嘘をついて宝物の写真をトランクに預けバスに乗り込んだー
 
 嘘じゃないか。僕にとってはRyan Mcginleyの作品よりお気に入りなんだから。
 
ろくにシートも倒れない 激安バスは満員の乗客を乗せて神戸淡路鳴門道・阪神高速
東京へ向け走り出した。
 
 
 
 
ー想い出のとなりには想い出の場所があり、想い出の曲があるー
 
 
 
 
僕の大好きな言葉。
 
 またひとつ、想い出と宝物を授かった旅だった。
 
 
 
ボンボヤージュ。
 
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あしあと。

2015.early summer

 

信州の静かな山里は汗ばむほどの陽気で

GWシーズンの観光客でにぎわっていた。

今日は僕が上京して7年目の日だ。

 

あの日と同じ出で立ち、新しい靴を履き、トランクひとつもって

カタカタと揺れる古い電車に乗って

静かな小高い丘にある、とある温泉宿を訪ねた。

 

人生の答えを探してー

 

 

*****************

 

 

あたたかな春の風を感じたあの日


新しい靴をおろしたあの日

夢を抱いたあの日

旅に出ようと決めたあの日

そんな日は昨日とは違う、新しい未来に夢を抱いていた。

 

 

-新しい靴を履いて家を出よう

明日はどんなことが起こるんだろう


大好きな歌を口ずさみながら

出会いと別れ繰り返しながら


前へ、前へ、進むんだ-

 



仕事ってね、何なんだろう


ある人は生活の糧と言うだろう

ある人は国民の義務というだろう

 

ある人は将来に備えキャリアに貯蓄にと頑張るだろう


ある人は夢をかなえるための道だと言い修行に人生を捧げるだろう



志が高いほど険しい道が待っている

棘が腕を刺し、ぬかるみに足を取られ

視界が開けたらそこは砂漠

でも、束の間のオアシスがあることを信じて

そして、その先に花咲く夢の街があることを夢見ながら

自分信じて前へ前へ歩くんだ




疲れ果てた精神は判断能力が衰え

それを知った心無い人間からの誘惑、騙しに遭い

それらを自らのせいだと自省し、耐え続けていると

 

見知らぬ街を歩き、美しい景色に触れてもいても、

心躍るような出逢いがあっても

 

ホテルの窓から見える夜景にも

 

ときめきを覚えなくなり

感動するという感情が心から消え失せてしまう。

 


学生の頃つまらない大人にだけはなりたくないと反抗してきた

感動とときめきにあふれた人生にすると決めていた


でも今の僕は夢も希望も持てない悲しい大人
地下鉄の駅に段ボールを敷いて寝ているひとと変わらない

もうだめだ、終わりにしようー

 

 


「何にもないけど、いつでも帰っておいで」

故郷には愛する人や街が僕の帰りを楽しみに待っている


「諦めたら終わりだ!頑張れ!」


励ましてくれる先輩の声が聞こえる





かっこ悪くていいから

ぼろぼろになってしまった心と靴でいいから

「あと一歩進んでみないか」

そんな声が彼方から聞こえた

そして振り返れば

今まで歩んできた足跡と

口ずさんだ大好きなあのメロディー。

そうだ、僕は夢を抱いた少年だった

外聞なんか気にするな

胸の高鳴りを感じたら

また新しい靴を履いて

トランク一つ持って旅に出ればいいじゃないか

そして、命をかけて歩いてきた足跡は決して消えないから

 



きっと夢がかなう日が来るから。

 

 

 

ボンボヤージュ。

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Places visited :Azumino city

HOTEL  :Secret(worked)

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女ゴコロと春の空

 

 

私といる時のあなたより、ひとりで旅から帰ってきた時のあなたの方が楽しそうで輝いてるー

 

 

荷造りをしながら彼女はそう吐き捨てた。

浮気相手でもいるのならならまだしも、何に嫉妬してんだ、、


約束と指輪は儚く冬の空に散って行った。

 

その日の夜、K氏から連絡が入る


「2/28行きませんか?」


噂の寝台特急のチケットが取れたらしい。

彼の連絡はいつも実にタイミングがいい。

節約節約、、と毎日粛々と暮らしているが
女にかばんやアクセサリーをを強請られたと思えば安いもんだろう。

 

Sat,February 28,8:40
噂のスカイマーク、SKY705便は定刻で羽田空港を飛び立った。
最近では珍しいウイングレットのついていないB-737は快晴の東京上空を旋回し

窓からは富士山、ディズニーランド、スカイツリーと美しい景色が流れ
進路は北へと変わった。

 

津軽海峡を渡り終える頃から高度が下がり始め、北の大地が近づいてきた。

 

10:18

着陸するなりLINEが鳴る。もちろんK氏からだ。
「列車の中でお待ちしてます。33分の快速間に合いますか??無理だったら50分の…」
いつもながら用意周到である。

向かった先はこの列車の終着、小樽駅
K氏から紹介され、行きつけになった地場の寿司屋で昼食にした。
名物の丼をサッポロ・クラッシックで流し込みながら。
小樽駅で大量の土産を買いこむK氏「誰に配るの?彼女?」と軽くなじると
「乗務員さんとか、お見送りをして下さる方とかいろんな方にお世話になっているので…」
ビールとつまみとミネラルウオーターを握りしめている自分が少し恥ずかしくなってしまった。

 

ろくに観光もせず、向かった先は札幌駅
ホームにはカメラを持った人で溢れかえっていた。


13:49

お目当ての列車がホームにゆっくりと進入してきた。

日本一の寝台列車・8002レ「寝台特急トワイライトエクスプレス」である。
1989年に誕生し、ヨーロッパのオリエント急行を意識して造られた豪華絢爛の列車である。
北海道新幹線延進の影響で、その勇姿がまもなく伝説となるため
ネットオークションではチケットが100万円を超えるなど、異常なほどの人気を博している列車だ。

鉄道マニアでもない僕がこんな列車に乗せてもらえるなんて…
デッキに足を踏み入れ、客室へと続く重厚なエントランスをくぐるとき
全国のてっちゃんに申し訳なくなってしまう。

14:05
超満員の乗客を乗せたトワイライトエクスプレスは、たくさんのオーディエンスをホームに残し札幌駅を静かに離れた。


程なくして食堂車「ダイナープレヤデス」ではカフェタイムが始まった。
男二人でスイーツかよ、と思っていたが、春の日差しに少しずつ溶けてゆく
真っ白な雪景色が車窓を流れ、気品あふれるステンドグラスや真鍮風の調度品に囲まれて頂いくコーヒーは格別であった。

寝台個室を堪能している間に日は暮れはじめ、ダイナープレヤデスでのディナーの時間が近づいてきた。


僕にはひとつのミッションがあった。
K氏は大学のころから大阪に住み、そのまま旅行会社に就職した。
慣れ親しんだ土地だが、明日3月1日から異国の地へと赴任することになった。
彼が大好きだったこの列車の食堂車で何か心に残るプレゼントがしたい。
準備中の食堂車や車掌室をおそるおそる尋ね事情を話した。
最初は驚いた様子だったマネージャーもシェフを紹介してくださり準備万端
ディナータイムが始まった。

 19:25

「K氏、この列車で一番高いワインあけちゃうねー!ムルソー!!」
お疲れさまと乾杯をして、華やかなディナーが始まった。
僕はもともとフレンチがあまり好きではないのだが、列車に揺られながら楽しむ料理は格別である。

アミューズ、ブーシュ、メインとコースは進み、華やかなテーブルに会話も弾んだ。

そして待ちに待ったデザート。

運ばれてきたプレートにはK氏の名前のデコレーション

そしてサイン入りのマネージャー特製メニューブック、手作りの記念乗車証などがK氏に手渡された。

K氏、笑顔。僕も最高に嬉しい。
僕たちだけでなく、食堂車の皆が笑顔に包まれていた。
登場から40年経った客車はお世辞にもスタイリッシュとはいえないが
大切に整備されてきた感がいろんな場所から伝わってくる。
沢山の人たちの夢や素敵なドラマを運んできた誇りがそこにはあった。

知人も合流したダイナープレヤデスでの会話は盛り上がり、時間も忘れ夜は更けていった。

Sun,March 1,2015 12:52

トワイライトエクスプレス谷村新司さんの名曲「いい日旅立ち」をBGMとした車内放送と共に
定刻通り大阪駅に到着した。

お願いしてあった新幹線の切符をK氏から受け取り大阪駅で別れた。
彼は律儀に「有難うございました」と僕に切符を渡してくれた。

手配の時「安く上げたいから自由席でもいいよ」と言ったが「カード使うと指定の方が安いので…」
とパソコンをいじっていたK氏
まぁ、得意分野だから任せようと確認もせず、新幹線ホームにたどり着いた僕は指定券
を取り出して乗車口へ向かった。

あれ??

乗車口にはグリーン車のマークがついている。
新幹線はすぐ発車してしまうから、確認は車内でしようと

とりあえず乗り込んで切符を確認するがやはり間違っていない。
グリーン車の東京に向かって左の窓側、車掌に聞いても「間違っていない」との事。

K氏に「え?切符!」とLINEした僕。
K氏からの返信LINEには

 

「そこの席しか富士山がよく見えないので」

 

とあった。

鈍感な僕はやっと気づいた。

この「グリーン車サプライズ」は彼流のお返しだったのだ。

 

17:23

のぞみ232号は定刻で東京駅に到着した。


東京につくまでの車窓は生憎の雨だったが
僕の心の中には立派な富士山がずっと聳えていた。

にわかに吹いた暖かな風を受け、空を見上げた-

 

 

 

女一瞬、ダチ・旅一生。

 

 

 

でもまた恋しちゃうんだろな。

 

 

 

ボンボヤージュ。

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Places visited : Haneda Airport-New Chitose Airport,
Otaru City,Sapporo Station-Osaka Station,Tokyo Station

 

SKY705 TYO(HND)8:40 →CTS10:15  on B787-300
New Chitose Airport STN-Otaru STN 快速エアポートrapid "AIRPORT" U-seat(reserved seat)
LUNCH "


Shobobanya, Otaru - Restaurant Reviews, Phone Number & Photos - TripAdvisor

"Shobo-Banya(Otaru city)”番屋丼Banya-Don"Sashimi Rice bowl 2800JPN

 

Sapporo STN-Osaka STN

Sleeper Limited EXP "TWILIGHT EXPRESS" room:private cabin(B Sleeper) "ツイン"
Sapporo STN -Osaka STN berth charge 16,780JPN

express fare 6,480JPN


basic fare(Sapporo STN,via Yamashina STN,Osaka STN)  21,070JPN
CAFE dining car"DINER PREIADES" limited sweets set  1,340JPN


DINNER dining car"DINER PREIADES"

Meal Ful-course meal of French cuisine 12,300JPN
Drink Meursault Louis Latour 2012 11,000JPN

****************************************Buon Viaggio!*****