黄昏色の列車に乗って。

ー僕が旅を続ける理由ー

回想―晩秋の北海道にて

晩秋の北海道を訪ねた。

日本の西や南に住む人にとっては冬の空気と感じるだろうが

僕はこの北海道の冷たい”晩秋”が大好きだ

 

空の高さ、風の香りと冷たさ

 

過去には帰らないことにしているが

 

1年前、夜汽車に乗り、この街にたどり着いたことを思い出した。

 食堂車でハンバーグステーキを頬張って、幸せを感じて涙したこと

今までの人生と向き合い、決別し、真っ当に生きていこうと決めたこと

その傍らで

 裏切りや金、愛する人、もう諦めようと思ったこと

 

そんなささくれた心を優しく包み

過熱した心身を冷まし、癒してくれたのが北の街に吹く晩秋の風だった。

 

 

拳を握りしめ、高く澄んだ空を見上げたー

 

北の夜は早く、気付けば星屑が舞い降りるように

白い雪がふわりふわりと空から落ちてきた

 

街路樹は美しくイルミネーションに包まれ

 

恋人達は手をつなぎガラス張りのショーケースを覗いている

 

 

 

 

”しがらみも、金の事も、何もなかった過去に帰りたいかい?”

 

 

そう聞かれたらどう答えるだろう

 

多分

「ほんのちょっとね」

と答えるだろう。

 

後悔がない訳じゃない

ただ変えられるのは未来だけだから。

 

夢は形を変えながら未来へと続き

胸にはいつも希望を携えて

 

何度失敗しても

北の街が僕の心を憂い、その哀しみを奪い去ってくれる

 

 

夢の街に向けて寝台特急がプラットホームから離れていった―

 

大好きだった赤い列車は、もうここには戻らない

 

 

 

”戻れないからいいんだろう?”

 

 

それでいいんだ。

 

息が詰まったら、苦しくなったら、道に迷ったら

 

またこの街に逢いに来ればいい

 

 

そう心に決めて

 

 

 

 

後ろを振り向かず、ボーディングブリッジを渡った

 

 

 

 

 帰り道、あなたに逢いたい

 

 

 

そう思いながら。

 

 

 

 

ボンボヤージュ。